2018年12月31日

IM Jeremy Silman に会う & その他諸々


チェスの本をよく買う方なら IM Jeremy Silman の名は聞いたことがあるし、おそらく彼の本を所有しているでしょう。私もかなり有名なやつを2冊(『Silman's Complete Endgame Course』と『How to Reassess Your Chess』)今月に入ってようやく購入し、読み始めました。その Jeremy が日本にいるという話をちょくちょく耳にしていたので本にサインをもらいたいと思ってました。調べているうちに Jeremy 夫妻にお会いする機会に恵まれました(誘ってくれたNKさん、ありがとうございます)。

私は最初に Jeremy が書いたインターネットの記事(以下は抜粋)に対して感謝を述べました。

私は Colle プレーヤーであり、黒が 3.Bg4 を指してきた時はこの記事に載っていたラインを使うのですが、これでレーティングが約2000のプレーヤーにも勝てたことがあります。Jeremy はこの記事を書いたことを覚えていませんでしたが、数え切れないくらい記事を書いてきたので当然でしょう。今は Google で検索してもこの記事は見つかりませんので、HTML形式のファイルをそのまま保存していたのが今頃になって役に立ちました。

せっかくの機会なので彼に一つ質問をしました。私は基本的に覚えることが比較的少ないオープニング(いわゆる businessman's opening)を使います。白番では Colle、黒番の 1.e4 対策としては Scandinavian ですが、1.d4 に対してはどのオープニングが businessman's opening に該当するのか?という質問です。彼はそんなことは考えたこともなかったと言い、考えてからメールで返事をくれると言ってくれました。

Jeremy の妻とも話しました。私は36才でチェスを始めたのでそんなに強くないと言うと彼女は「Jeremyは12才で始めたのが遅すぎたと嘆いている」と教えてくれました。調べたら、Carlsen 5才、Fischer 6才、Kasparov 6才。あまりはっきりと書く人はいませんが、始めた年齢と到達可能な最高レーティングにはある程度相関関係があると考えています。私の感覚ではざっくり10代で始めた人は2000以上、20代で始めた人は2000近くまではいける感じです。もちろん本人の才能と努力次第ですが。そういう私は50才を目前にもう少し頑張ってみようと考えています。Jeremy の本を買ったのもその一環です。

上達したかどうかはレーティングで測るのが普通ですが、誰でも参加できるFIDEの国内大会は年に1回しかありませんし、JCAのタイムコントロールの長い大会は少ないので私はそれらのレーティングは指標としてはちょっと頼りないと感じています。贅沢を言えば毎週末 90分+30秒/手のゲームを2局くらい指したいです。毎日やっている Chess.com の Blitz 5|5 と Tactics Trainer のレーティングの推移は以下の通りです。どちらも不調な時期がありましたが、年始と年末を比べると大して変わっていません。



Blitz 5|5 のレーティングは指標としては有効かもしれませんが、それ自体は大して棋力アップに貢献していないと感じます。例えるならば、ダイエットせずに毎日体重計に乗っているようなものです。体重を減らしたいならダイエット(運動、カロリー制限、等)が必要です。ダイエットに相当するチェスのトレーニングは ... これは人によりますが、私の場合は自分の一番苦手な visualization を強化する必要があると考えています。Visualization がダメダメなかぎり、試合で自分の読みに自信が持てませんし、Tactics も読み間違えます。寝る前に盤を頭に思い浮かべることを数え切れないくらい挑戦しましたが、この方法にはまったく見込みがなさそうです。なので、もう少し無理のないレベルから始めることにしました。既に一度は読んだ Chess Training Pocket Book の読み直しです。ポイントはこれが紙媒体で駒を動かせないという点です。Chess.com の Tactics Trainer だと駒を動かせるのでつい1手(特に強制手)動かして相手の動きを確認してから次の手を考えますが、本の問題だと最初から最後まで頭の中で考えねばならず、自分にとってはこれが有効なのではないかと。

2018年11月25日

Japan Open 2日目

4ラウンド目。黒。初対局のNさん。Catalan。


半年前の自分だったら白にキングサイドのフィアンケットをされた場合、ほぼ ...c6 一択でした。今は試行錯誤してより良い形を模索中です。


クイーン交換が終わった直後です。ピースが減れば減るほどドローっぽくなります。


ここで合意のドロー。実際、解析結果↓を見てもドローのようです。

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5ラウンド目。白。3回目の対局となるM君。Colle System。

12.dxc5 の直後です。12...Bxc5 なら 13.Bxf6 なので、私は 12...Qxc5 一拓だと思っていたのですが、12...e5 という不思議な手が来ました。解析によるとベストは 12...a5(きっと 13.b4 防止でしょう)で、次善が 12...e5 だったので彼の感覚は優れているのでしょう。


25.Qf2 でビショップを守ろうとすると 25...Re2 が痛そうなので、本譜は 25.Qg3 でビショップを捨てましたが、これはブランダーのようです。彼は「25.Bxg5 が最善でクイーンを取られてもまだ白の方が良い」と言います。解析結果を見ると↓白の方が良いは言い過ぎとして、25.Bxg5 が最善なのは間違いなさそうです。自分にはこんな局面評価はできる気がしません。見ている風景が絶対違いますね ...



Threat となっている ...Rh6+ が痛すぎるのでここでリザインしました。
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6ラウンド目。黒。久しぶりの対局となるIさん。Scandinavian。

白が最善とされているラインにするすると入ってくるのでプレパされているのが分かり、プレッシャーがかかりました。


これがこのゲームの複雑な中盤をよく表している局面。ここは黒の方が良いという評価ですが、指している側としては混沌としていて見落としがないかひたすら心配していました。


ここで 20...Nb4 を指し、見えていなかった 21.Bc5 が来て「終わった」と思いつつも粘ることにしたのですが、解析↓を見て驚愕。ブランダーだったと思った手が最善ということになっていました。



最後はやっちまった感のあるチェックを喰らい、リザイン。
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結果は1勝3敗2ドローの2.0ポイント。ぱっとしません。

抽選会でいただいた景品(ハリーポッターのチェスセット)は子供に譲りました。

2018年11月23日

Japan Open 1日目

1ラウンド目。白。Bさん。1.d4 d6 2.Nf3 Nf6。

お互いに慣れないオープニングで時間を使い、tactics が何もなくピースが徐々に減り、お互いナイトが2つ残るエンドゲームに突入しました。残り時間は共に3分前後。

黒の方からドローをオファーしてきたので快諾。なんせレーティング差が400以上あるんですよ。ドローでもアップセット扱いです。
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2ラウンド目。黒。Aさん。Semi-Slav。

試合が始まる前に前回のゲームを復習しました。Semi-Slav の Meran だったのですが、前回間違えたところを仮に正しく指せてたとしても私にはやりずらい局面でした。

なので、前回と同じ 6...dxc4 はやめて、6...Bd6


なんか殺されそうな気がしてきました。Qh7# を防いでいるのは f6 のナイト一人だけで、心細くなってきたので逃げ道確保の 14...Re8


キャスリングをなかったことにするかのような 18...Rh8?。白はどこかで Bxh6 をしてきそうな気がしたので漠然とした不安に備えたつもりだったのですが、19.Ng6!? が飛んできて愕然としました。


この 24.Ng6+ は来るのが見えていたけど何も出来ませんでした。8手後にリザイン。
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3ラウンド目。白。N君。Queen's Gambit系。

黒はこの 5...b6 をずっと後悔していたようです。私も悪い手に違いないとは思っていましたが、咎め方が分かりませんでした。


黒はタイムトラブル状態に陥りました。時間があれば、21...Bf7 を見つけられたでしょうが、21...Bd7 と指してしまったので 22.Nxd5 で1ポーンアップ。


ここで相手の時間が切れたので勝ち。2ポーンアップでしたが、もしお互いに時間がたくさんあったら勝てる自信はありません。
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2018年10月8日

東京オープン3日目:エンドゲームの知識は重要!

5ラウンド目。黒。T君。Reti。

白がキングサイドにフィアンケットすると ...c5 より ...c6 の方が安心なのですが、今回は実験的に 7...c5 です。


フィアンケットする人はビショップをここぞという時にしか交換しないイメージなので、14.e5 は意外でした。14...Bxe5 15.Bxe5 Qxe5 16.Bxb7 で双方の黒マスのビショップが消えます。


次にピンされたナイトを 18...Qc3 で取れたりするんじゃないだろうかと期待していたのですが、そんなに甘くはありませんでした。18.Nc4 で あっさりとピンをはずされました。


うっかりナイトフォークを喰らってしまったので即リザイン。

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6ラウンド目。白。Y君。


開始前には相手が Colle にするって言ってたはずなのに ... これは Philidor。やばいです。1.e4 e5 系のオープニングには疎いんです ...。序盤はずっと「これはきっとおかしな手を指してるんだろうなぁ」と思いながら指してました。


もしこの状態で 12.Bxf6 が出来たら、c5 のナイトを守り続けるために 12...Bxf6 ではなくて、12...gxf6 としなければならないのでちょっと期待。飛んできたのは 11...Be612.Bxf6 Bxc4 の後は 13.Bxe7 ではなく、13.Bxe5 とすべきでした。


ナイト対ビショップのエンドゲームになりました。ビショップの方が機動力があるのでナイトを持った側はポーンの島を少なくした方がいいということは知っていたのですが、自分が悪手を指したこともあり、ここから先はなかなか思うように進みませんでした。なお、この局面の評価は 0.00。


この 42...c4+ を機にポーンのエンドゲームに突入します。43.Nxc4 Bxc4+ 44.Kxc4 Kxe4 で以下の局面に。

8/p7/8/6p1/2K1k3/P7/7P/8 w - - 0 45
キングサイドの黒のポーンを止めるには(やや黒側の陣地を通りながら)黒キングを斜めから追いかけると良いということはエンドゲームの知識としては知ってはいたのですが、きちんと応用できる程度には理解していなかったことが判明。黒キングがf列に移動してから追いかければ間に合うと勘違いしていたので 45.a446.a5 で無駄なテンポを使ってしまいました。次はきっと間違えません。

8/p7/8/P7/2K3p1/5k2/7P/8 w - - 1 47
こうなってしまうと一方的にポーンを取られてオシマイだと思い、ここでリザイン。

しか~し!これでもまだドローに出来るチャンスがあったそうです。仮にここから両者がプロモーションを狙うと白の方が早いのですが、以下のような局面だと黒キングは近寄る余裕がないのでひたすらチェックをかけ続けるしかないのです。ポーンがa列、c列、f列、h列のいずれかにある時にだけ成立します。これは知りませんでした。エンドゲームの知識は重要!

1K6/P7/8/8/8/8/7k/6q1 b - - 0 52
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1勝3敗2引き分けで 2.0/6.0 でした。パッとしませんが、最後のゲームはエンドゲーム的には良い勉強でした。

2018年10月7日

東京オープン2日目

3ラウンド目。白。O君。Pirc。


直前の黒の手は 23...c7-c5。それに対して 24.c4。あまり好きな手ではないですが一応 best move。考えていたことは黒クイーンがf8にいるなら、黒のc5のポーンはその位置に固定させたい(そして、黒から 24...bxc4 とはたぶんしてこないだろう) ... くらいでした。 24...Nb6 (予想通り)25.Qc7 (h2よりマシなマスに動かしたかった) bxc4 26.Qxb6 cxd3 27.Rxd3 の後、こうなります:

これなら、aポーンやcポーンが落とせるだろうと期待したのですが、実際にはうまくいかず、ナイトのエンドゲームに突入。


上記ポジションでドローオファーするも却下されました。


8/8/p4p2/3k2pp/1Pp4P/P1K2PP1/8/8 w - - 0 53
ナイト交換後、黒が 52...g5 を指してドローオファー。ここで自分の考えていたことは、
(1) 53.hxg5 hxg5 は 54...h4 とされるとマズイので取れない。
(2) f3のポーンは黒キングをe4に来させないために動かしたくない。
(3) 53.a4 f5 54.a5 f4 と進むと最終的にこっちがツークツワンクになる。
自分の方が悪い。そう思ってしまったのでドローにしましたが本当は白が良かったようです。そもそも黒は 53.a4 の後、53...f5 は次に 54.hxg5 が入るからおそらく指さないでしょうが、脳内で駒の動きをイメージできない私は、黒のgポーンがずっと守られているから取れないと勘違いしていることに後で気付きました。53.a4 と 54.b5 を指すライン(例えば、54...axb5 55.axb5 Kc5 56.b6 Kxb6 57.Kxc4)はそれ以上読める自信がまったくありません。なので、後悔はしていません。
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4ラウンド目。黒。Tさん。London System。


8...Nxg3 9.hxg3 でhファイルが開いたため、私はほとんど終盤までずっとhファイルからのルークの圧力を受けることなってしまいました。8...Bb7 でe4のナイトを補強する方が良い手だったようです。


上記はクイーン交換直後で白番。18.e4 を指されるとマズイことに気付きます(ポーンを損すると思いましたが、実際にはそんな単純ではないようです)。しかし、本譜は 18.Nd5。ちょっと安心しました。


黒のビショップは絶好の位置にいます。白のナイトも悪くないですが、...f6 で追い払うことは可能。しかし、それよりも、cファイルを開けて Rc2+ を入れる方が強烈です。


こうなると白はナイトを捨てざるをえません。白はメイト直前まで粘りました。勝ち。
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2018年10月6日

東京オープン1日目

タイムコントロールは90分+30秒/1手。 1ラウンド目。白。Sさん。Colle。


11.dxc5。期待していたのは 11...Bxc5 12.Nxc6 Qxc6 13.Bxf6 みたいな流れでした。しかし、いかんせん相手はレーティング 2100+。気付かれてしまいました。11...g6。ガッカリしましたが、12.Nxc6 Qxc6 13.b4 で得したポーンを補強します。

上の局面で黒番。「次に Bxg6+ が出来たらいいなぁ」と期待していたら、d3のビショップが相手にとって相当な脅威だったらしく 31...Rxd3 とルークと交換しにきました。しかし、32.Rxd3 Re8 の後(下の図)私は時間切れ寸前。

次に 33...Bxc5+ が来るのは分かってましたが、何でもいいから動かさないと負けてしまう状態。33.Qg3?? Bxc5+。時間切れ負け。
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2ラウンド目。黒。N君。QGD Exchange variation。

ここでキャスリングすべきでした。クイーンサイドにキャスリングしてキングサイドのポーンを突きたいとか甘いことを考えていたら、結局どっちにもキャスリングできない状況になってしまいました。


黒番ですが、何をしていいか分かりません。15...Bxf5 でナイトを得できそうに見えるのですが、16.Nd6+ Kf8 17.Nxf5 が可能です。本譜は h6 のポーンを補強するつもりの 15...Bf8 。しかし、16.Ned6+ Bxd6 17.Nxd6+ の後、b7 のポーンが落ちます。


ここで白からドローオファー。マテリアルも局面も白の方が上。こっちが優っているのは残り時間くらい(13分 vs 20分)。相手のレーティングは私より300以上も下なのでレーティング的には痛いですが、粘る気力がまったく湧いてこなかったのでドローを受けました。

2018年9月2日

チェスクロック買いました


上は私がチェスを始めた当初からずっと使っていたチェスクロック、DGT2000です。その当時、他の選択肢はあまりなかったと思います。ボタンを押した時の反応が鈍くなってきたので買い換えることにしました。フタがネジ式なのと電池の収納方法が古臭くて好きではありませんでしたが、電池はかなり長持ちしました。

アービターの研修に参加して分かったことはDGT2000はFIDE公認モデル(下の一覧参照)に含まれていないということです。きっと20分になるまで秒単位が表示されないからでしょう。

最近JCAの大会ではチェスクロックが用意されるようになったので、もう自分の時計を持って行く必要は薄れてきました。しかし、JCAが使っている KK9908 には嫌な点があります。一つは、40手に到達したら30分が追加されるようなタイムコントロールの場合、40手に達してもすぐにその30分が足されるわけではないという点です。40手を過ぎており、尚且つ、最初のピリオッドの時間を使い切った場合にようやく30分が足されます。なので、40手を過ぎて残り1分という場合に、本当に30分が足されるのか不安になるし、表示上は1分しかないので無駄なタイムプレッシャーがかかります。また、同じタイムコントロールで40手に到達する前に時間を使い切ってしまった場合、紛らわしいことに時間が追加されて時計は動き続けます。その代わり、時間切れを示す旗のマークが表示されます。


買ったのはDGT3000です。色(赤)が好きというのもありますが、いつか電子ボードとつなげてみたいと思っています(お金がかかるわりに1回試して終わりという可能性が高いので本当にやるかは疑問ですが)。ちなみに、撮影中に電池がハズれてしまったのですが、なんと液晶の表示はしばらく消えませんでした。そういうトラブルへの備えとして内蔵のバッテリーも持っているようです。