2016年11月20日

Japan Open 2日目

4ラウンド目。白。昨日は絶不調でアップセットを2回も喰らったO君。Queen's Indian。

私が 30.Qc1-d1 を指したところです。Qd1-h5 のクイーン交換をちらつかせました。それを嫌った黒が間違えます。30...g4?。f4のマスがナイトに使いやすくなりました。31.Ne2 Qg5 32.Nf4 Ref6

ここで黒からドローオファー。e6のポーンは取れますが、残り時間が少なくて勝てる自信がなかったし、レーティング差が約500もあるので満足です。ドロー受諾。彼の不調は本物のようです。
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5ラウンド目。黒。Fさん。Scandinavian。

ここからタクティクスが飛び出します。23.Nxd5。このナイトを取ると 24.Qe3+ でh6のルークが落ちます。危ない、危ない。


プローモーション・レースのようになりましたが、残り時間1~2分だったのでまともに考えられません。本譜は 48...Kb7 でaポーンもcポーンも止めらる最適な手のつもりで指していましたが、Fritz先生によるとそれは悪手(なんと評価が -4.84 から 4.30 に反転)で正解は 48...f2。なるほど、たしかに。


結局双方プローモーション。しかし、死にそうなのは明らかに私方。それなのに白の方からドローオファー。白からのチェックが途切れた途端にこっちから ...Qb1+ とチェックを始められるのが嫌だったそうです。ありがたや、ありがたや。Fritz は上の局面から9手メイトがあることを示していますが、まあ、我々は人間ですからすべては読めません。
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6ラウンド目。白。初対局のCさん。Anti-Colle。

9手目で mate threat。黒は当然 9...Kf7。このラインに入ると相手が格上でも勝てることがあります。


しかし、残念ながら実力差は出てしまいます。...Nxc3 には Qxc3 で取り返したかったため、27.Qd4 と指しましたが、これが形成が逆転してしまうブランダー。27...Rf4 28.Qxa7 Ra4(下の図)が激痛。正着は 27.Qe1 だったようです。

ここから一気にボコボコにされます。負け。
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結果、1勝3敗2分。これだけ見ると悪いですが、負けたゲームは相手のレーティングが300以上も上だし、ドローのゲームは相手の方が250と500も上だったのでレーティングはプラスになると思われます。この大会はレーティングが近い人に一人も当たりませんでした。

2016年11月19日

Japan Open 1日目

1ラウンド目。黒。N君。Semi-Slav。

直前の 13..Nd7-b6 が悪手で、上の 14.Ne5 を許してしまいました。14...Bxc3 も 14...Nxc4 も自クイーンの逃げ場がなくなるので出来ません。f7 への圧力が厳しく、せめてルークを連結させようとし、14...Be6 15.Bxe6 fxe6 16.Qxe6+


何を勘違いしたのか上の局面で 23...cxb4?。自ら exchange down になる方を選択。他にもおかしな手が幾つもありました。負け。
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2ラウンド目。白。Kさん。Pircもどき。

序盤は手順をよく考えなかったせいで e2-e3 e3-e4 と2手かけてしまい、少し自己嫌悪。

予想していたのは 17...c5 でナイトの逃げ道を作る手でしたが 本譜は 17...Nexg418.hxg4 でピースアップですが、この後 無駄にポーンを献上しました。

さらに、29.Rf1? Qg5+ がチェックなのを見落としてビショップを返してしまいます。局面はともかくマテリアルだけ見ると2ポーンダウン。

上のような Mate threat を作り、相手のクイーンとこちらのルークとナイトを交換。結果的には勝てましたが、レーティング差が500もあったとはとても思えない恥ずかしいゲームでした。
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3ラウンド目。黒。Eさん。Semi-Slav。

こんなあからさまな mate threat が格上相手に決まるはずがありませんが、黒でこういうポジションに出来ただけでも自分ではかなりハッピーだったりします。その後、passive な手を指してしまったせいで initiative を失いました。


ここが唯一のチャンスらしいチャンスだったようです。22...Bxe4 23.Bxe4 Nxa2 で良かったそうです。途中まで白マスのビショップを大切にしてたのでこういう局面で頭の切り替えが出来ませんでした。本譜はナイトの動きを牽制するつもりだった 22...Qb7 が実は見掛け倒しで 23.Nf6+ Kh8 24.Be4

24...Nd5 25.Nxh7

負け。
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2ラウンド目が終わった頃から脳の疲れを感じました。帰宅後も眠くてしかたありません。普段使っていない脳の領域を使っているのを感じます。

2016年11月12日

小島君のレクチャー:Carlsen と Karjakin


今日は世界選手権での争いが始まったばかりの Magnus Carlsen と Sergey Karjakin のゲームがそれぞれ2ゲームずつ取り上げられました。

Carlsen は この Boris Gelfand とのゲーム の中で g2 のビショップが活かせるようにダイアゴナルを開けるための工夫を見せてくれます。

15.g4!。狙いは e4 のナイトを取る際に、ビショップで取り返せないようにすること。

また、帰宅後 このゲーム の続きを見たのですが、他にも目を疑うような手を指していました。

26.Nc2 を指したところです。タダに見えますし、26...Nxc2 27.Bd5+ はたしかに痛そうですが、致命的には見えません。でも、Gelfand は取らなかったのできっと取るのは悪い手なのでしょう。

一方 Karjakin は この Alexandra Kosteniuk とのゲーム でタクティクスの強さを見せてくれます。

30.Qxa6 Rxc1+? 31.Rxc1 Rxa6? って「?」が2回も付いてますが、

32.Rc8+ Qe8 33.Rxe8+ Kf7 34.Ra8

Kosteniuk が見落としたのは白の最後の手のようです。

世界チャンピオンを争う二人なのに、Carlsen が勝つであろうと予想されているようです。有名なGMがたくさんいるのに一人だけ抜きん出て強いというのは結構不思議です。私はレーティング1800以上の10代や20代にまったく勝てませんし、その彼らは小島君には敵わず、小島君も有名GMには勝てないという食物連鎖のようになっています。しかし、GMは皆 幼い頃からやっていて、知識の量も読みの深さも速さも一流なのに Carlsen だけ何がそんなに違うのでしょう?エンドゲームが強いとはよく言われていますが、序盤と中盤を切り抜けないとエンドゲームにはたどりつけないので、決してそれだけではないはずです。天才とはそういうものなのでしょうか。
ちなみに、今日レクチャーに参加していたE君は上記の Karjakin のゲームの 30.Qxa6 を読めるくらいなので、明らかにレベルが上がっています。彼には去年はぎりぎり勝っていて、今年の5月はドローでしたが、次回当たったら負けると確信しました。私がチェスを始めた10年前はJCAの大会に参加する小中学生にそんなに強い子供はいなかったと記憶していますが、最近はもう高校生でも鬼のように強い気がします。