2011年10月30日

『猫を抱いて像と泳ぐ』

小石の波紋が広がるように、小さな“あること”が予定変更の連鎖を起こしています。そのあることとは靴擦れです。別に靴が新しいわけでもないのに先週の水曜日のウォーキングが終わると両足の踵に出来てました。木曜日はまともに歩けずウォーキングは途中で無念のリタイア。金曜日以降は仕方なく踵が痛まないエアロバイクに切り替え。土曜日は妻と外出したのですが、痛みが増していて普通に歩くことが出来ず、踵が地面に接しないように走ってました。一人で先に行き、妻が追いついたらまた走るの繰り返し。今日は松戸チェスクラブの例会に行く予定でしたが、相変わらず踵が痛いので行くのは諦めました。

エアロバイクの利点は音楽をかけながら(ウォーキングでは後ろから来る自転車の接近等に気付きにくくなるので私はあまりしません)さらに別のことが出来ることです。で、『猫を抱いて像と泳ぐ』を読んでいたら、暇でしょうがない人間ドックの日に読むはずだったのに読み終えてしまいました。以降はこの本の感想です。

-----

この本の評判は世間一般では非常に良いようで、悪い評価は目にしたことがありません。しかし、私の評価はB(普通よりちょっと良い)です。決して退屈ではなく最後まで読みたいと思わせるだけの魅力はありますが、手に汗握るような興奮や心を揺さぶられるような感動はありません。音楽に例えると私はクラシックの旋律の美しさや表現力の豊かさよりもハードでファンキーなロックに惹かれるのと同じように、小説に対して求めるものが描写能力や哲学的な何かではなく、戦いやサバイバルの緊張感が溢れる娯楽的要素の多いストーリーだからでしょう。

閉じ込められて動けない登場人物が多く、主人公は大きくなること(成長すること)をネガティブに捉えていました。そのテーマは様々なエピソードを通じてじんわり強調され、全体的に調和がとれていて、著者の想像力や構成力が見事なのは分かります。しかし、人生とは弱肉強食で健康面でも経済面でも強くなくてはならないと考える私の価値観と主人公のひ弱な行動・価値観が合致しないため、ずっともどかしさを感じていました。私は力強く生きるヒーロー的な主人公でないと感情移入ができないようです。

当たり前ですが、同じものを見たり聞いたりしても、人によって感想や印象に残ることは異なります。映画『ハリー・ポッター』にチェスシーンがあったことがあまり印象に残っていなかった私にはそのシーンを見てチェスを始めた人が日本に複数いたことは驚きでした。さて、『猫を抱いて像と泳ぐ』を読んでチェスを始めてみようと思う人はどのくらいいるでしょうか?私の感想はさておき、評判の良さに比例してチェス愛好家が増えることを期待します。

3 コメント:

chen さんのコメント...

踵が速く治るように。。。お大事に!!
吉祥寺クロージングトーナメントの写真を拝見しまして、ありがとうございました。

水野優 さんのコメント...

 私も『猫を抱いて象と泳ぐ』に関しては微妙な感じで、ブログに書評を書けずにいます。一つには、私の『ボビー・フィッシャーを探して』訳が出るときに帯をお願いする案があったからという事情でした。

 それよりも、チェスにどっぷり浸かった者から見ると、オートマトン、アリョーヒン(猫好き)、ビショップを暗示する象等の様々な要素をよく一つのファンタジーにまとめ上げたなと、その手法ばかりに目がいってしまって、とても純粋には楽しめなかったことです。

 これは私自身が小説を書いたことがあるし、最近は映像作品を作っているからでもありますが、チェスを知らない人がどう読んで感じるかを客観的に想像することすら難しい気がします。だから、チェスを始めるきっかけになるかどうかは言わずもがなでしょう(笑。

kawanaka さんのコメント...

chen 様、

ありがとうございます。靴を履くのがまだ痛いので昨日も今日もサンダルで通勤しています。

水野優様、

いろいろな物に対して(音楽や小説に限らず食べ物や衣類に至るまで)私はなぜかあまり“上品、上質、高級、繊細”と形容される類のものに魅力を感じません。もし私の書いた書評が気に入らない人(小川さんのファン?)がいるなら、高尚な文学を堪能できる域に達していない人物の意見ということにしておきます。幸い(?)私は小川さんとは面識がありません。

コメントを投稿