2018年2月25日
FIDE Arbiter のセミナー
最初にこの企画のことを知った時は、自分が参加するつもりはありませんでした。私は大会にはプレーヤーとして参加したいので、自分がアービターをやるということは考えにくいからです。しかし、滅多にないイベントだし多くの人が苦手意識を抱いている英語が苦ではないので軽い気持ちで申し込みしました。でも、テキストをダウンロードして読み始めてちょっと後悔。分量がめちゃくちゃ多いです。読んでみたい人はFIDEのサイトのArbiter向けのセクションで見つけられると思います。秘密文書ではないので。最初のうちはチェスのルールなので難しくありませんが、ペアリングの説明に入ると難解&退屈なので私はすべてを事前に読んでおくことは諦めました。また、GM等のタイトルを取得するための要件を読んでも、自分とは縁のない世界なのでどうしても他人事のように感じてしまいます。
レクチャーでカバーしたトピックは主に以下の通り。
●チェスのルール
●チェス用品(会場やテーブル等も含む)
●大会の種類(Rapid, blitz)
●アービターの役割
●不正対策
●プレーヤーのタイトル(GM、IM、等)
●アービターのタイトル
●ペアリング
●レーティング
多くのことに関してついJCAの状況と照らし合わせて考えてしまいますが、このレクチャーはあくまでもFIDEレーティングの大会を前提とした内容です。つまり、全国大会とジャパンリーグ以外の大会は必ずしも適用できるものばかりではありません。例えば、JCAの大会ではJCAが貸し出している時計がトラブっているのも何度も目撃しました。これはおそらく問題を起こした時計を修理・廃棄せずに繰り返し使っているからだと推測します。この状況を説明したところ、講師いわく、そもそも時計も駒も本来は大会運営者がすべて用意すべきものだが(しかも、すべて同じものを)「FIDEの大会なら」という条件が付きます。ただ、現在JCAが貸し出しているモデルはDGT2000であり、それはFIDEの推奨モデルよりも古いです。全国大会やジャパンリーグではFIDEが認めたモデルを用意するように要請すればJCAが時計を買い変えてくれるかもしれません(というよりも、本来はそうすべきです)。そういう自分の時計もJCAと同じDGT2000なので、FIDEの認めたモデル(DGT XL、DGT 2010、Silver Timer、Sistemco、DGT 3000)のどれかに買い替えようと思いました。
JCAの大会でのアービターの人数や質に対する不満の声はよく耳にします。そこで私は考えました。不正対策として身体検査を行う場合、プレーヤーと同じ性別のアービターが検査を行うことになっています。ということは、少なくとも男女一人ずつのアービターが必要になるはずなのでJCAにそれを要請できるかどうか尋ねてみましたが、回答は予期せぬものでした。「それは(アービターというよりも)運営側の問題。単に男女二人ずつのアービターを用意してもらえばいいだけでは?このレクチャーの参加者がアービターをやればいいのでは?」みたいな内容です。レクチャーはあくまでもアービター(志望者)向けのものであり運営がどうあるべきかという内容ではないのでそうなってしまうのでしょうが、今回の受講者の中からわずか数人でもアービターになってくれれば状況が改善されるのはたしかです(ここはちょっと他力本願です)。
このレクチャーを通じて実感したのは、アービターに要求される能力は結構高いということです。イリーガル・ムーブが生じた場合に持ち時間を追加するような設定は30秒程度、遅くても1分以内に完了できるようにトレーニングしておかねばなりません。また、ペアリングやタイブレークに関する質問を受けたらどうしてそういう結果になったかを説明できなければなりません。それだけでも大変そうなのに、FIDEアービターの資格を取得すること自体も実は大変です。私はレクチャー最終日のテストに合格すれば FIDEアービターの資格を取れると考えていたのですが、それは勘違いでした。FIDEのアービターになるには、GMやIMと同様にノームがあり、ざっくり言えば FIDEの大会3つでアービターを務める必要があります。これはハードルが相当高いと感じました。日本だとFIDEの大会は年に2回しかなく、どちらかといえば私はプレーヤーとして参加したい大会です。しかし、本気でFIDEアービターの資格を取りたいと思う人達はみんな今度の全国大会でアービターをやるでしょうから、普段の大会よりもアービターがたくさんいるかもしれません。
最終日のテストですが、テキストを参照したり計算機代わりに使うために、PCやスマートフォンの利用が可能。さらに、3時間以上もあるので余裕だろうと舐めてましたが、甘かったです。レクチャー中に使われた例がそのまんま問題になっているようなケースも多々ありましたが、ペアリングやGMタイトルの要件判定の問題は計算が面倒くさくかなり時間を取られました。合格ラインは80点(100点満点中)ですが、受かっているかどうかは微妙です。
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