先日、約20年ぶりに下北沢を訪れ『チェス盤の馬』という劇を鑑賞しました。
チェスで何億と稼いだプレーヤーがホテルお抱えの真剣師となって賭けチェスをしているという設定です。チェスプレーヤーの視点で見るとツッコミどころは当然ありますが、たった一週間の上演のためによく頑張ったものだと感心しました。ゲームはすべてブリッツの速さです(ちなみに“スピード・チェス”と呼んでいました)。1手ごとに長考していたら観客は退屈してしまいますからね。弱いプレーヤーは白番で 1.a3 2.b3 3.c3 4.d3 と指していたように見えましたが、強いプレーヤー同士だと Nimzo Indian っぽかったので、きっと有名なゲームを模していたのかもしれません。両手を使ってキャスリングしたり、時計を押し忘れたり、チェックがかかっているのに対処せずに関係ない駒を動かしたりしてましたが、それまでチェスを指したことがなかった役者さん達がセリフと棋譜の両方を思い出しながら指していたわけですから相当大変だったと想像します。
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今日のレクチャーのテーマは攻防一体の手。例えば、以下の 6...Qf6 は e5 のナイトを守りながら、7...Nf3+ の discovered attack の threat を作る攻防一体の手になります。
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GMらしいと思えたのは Gabriel Sargissian vs Emanuel Berg のゲームからの 37.Ra3。d4 のビショップが取られそうなのにもかかわらず、38.Rg3 を狙います。自分が黒だったら、キングかクイーンを動かしたくなりますが、37...Rxd5。38.Rg3 に対しては 38...Rg5 で対処できます。その 38...Rg5 を阻害するための 39.h4。そして、39...e3
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白が 40.Rg3 を狙うために 39.Rxe3 としてきたら、黒は 39...Rxd4 とビショップを取ってから 40.Rg3 に対して 40...Rg4 と対処できます。これは解説がないと分からないですね。39.Bxe3 Qxf6 40.Bf4
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このビショップはタダで取れそうに見えますが、もし 40...Qxf4+ だと 41.Rg3+ となり、黒はクイーンを手放さないと 42.Qg7# になります。40...Rf7 はその白の策略を封じ、ビショップを守れなくします。自分ではとても思いつかないGMらしい手が連発されていて面白いゲームでした。