2024年7月20日

ギネス世界記録に挑戦/FIDE 100


最後にOTB(≒オフライン)のチェスを指したのは3年前。チェスのゲームも練習も毎日やっていますがオンラインでした。多くのチェス勢がOTBに復帰しても私はコロナを警戒して遠のいたままでした。

今日参加した大会(FIDE 100)はチェスの世界的な運営組織であるFIDEがその設立100周年を記念し、ギネス世界記録に挑戦すること目的とする大会です。目指すのは24時間以内にプレーされたゲーム数の記録です。ギネス記録に貢献できる機会なんて滅多にないので、これを機にOTBに復帰しようと思いました。

今回の参加者・見学者・運営スタッフのうちの8人と挨拶することができました。意外に皆さん、変わっていません。私は3年前よりも13kg 減っているので体形が変わったはずなんですが、気付いてもらったのかは分かりません ...
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1ラウンド目。黒。I君。Scandinavian。


相手は小学生ですが、さくさく定跡通りに指してくるのでオープニングは分かっているのを感じました。


この 10.Bf4 は 11.Ng6 を狙っているのが分かります。「この子は強い」と確信。


23.Qxb6 axb6 24.Nxb7 でポーンを損しますが仕方ありません。白がこちらの駒を取ったので、23...axb6 を指したのですが、相手はチェスクロックを止めてアービターを呼びました。こういう作法をちゃんと知っているのもさすがです。そして、あらためて盤面を良く見ると、

白が指したのは 23.Qxb6 ではなくて 23.Nxb7。私の手はイリーガルなので相手の持ち時間に1分が加算されました。しかし、touch and move の原則だと私は a ポーンを動かさなければなりません。つまり、クイーンが落ちます。なので、ここでリザイン(降参)。
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2ラウンド目。白。Sさん。Colle System。


26...Nd2+ は予期していなかった手。感覚的には負けだと感じていたので、評価値がこうして白の有利を示しているのは意外です。


時間切迫でここで黒のビショップが取れるのを見落としていました。29.Re2 Qd1+ 30.Re1 Qxg4。

リザイン。
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3ラウンド目。黒。Nさん。Anti-Colle。


この 29.f4 で負けたと思いました。30.Qxg7+ を喰らったらゲームオーバーです。

なんとか 29...f5 をひねり出せて良かったです。まだゲームを続けられます。


ポーンをつまみ食いしていた私とは異なり、白は7段目をルークで占拠して私のキングに猛攻を加えていました。しかし、白のイニシアティブが途切れると、ポーンが役に立つ時が来ます。白は 35...c2 でリザイン。

参加することに意義がある大会なので勝敗はあまり重要ではないのですが、さすがに全敗は精神的にきついので、正直 勝てて嬉しかったです。

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4ラウンド目。白。M君。

この大会は棋譜を取る義務がありません。私はそれでも棋譜を取っていましたが、最初に当たった3人は棋譜を取っていませんでした。4人目の相手は棋譜を取っていたのでちょっと親近感を感じました。


黒は 3...Nc6 で cポーンを動かせなくしているし、5...e6 で白マスのビショップを自ら封印しています。これを見てちょっと安心。


私の手は 13.e4。取ってくれることはあまり期待していませんでしたが、取ってくれました。13...dxe4 14.Nxe4。


黒の黒マスビショップはもう助かりません。あとは自分がブランダーさえしなければ勝てると感じました。


終盤の黒の 27...Rc7 のような、とりあえず相手の駒に当てるような動きは、そんなにメリットはありません。ルークとキングで協力してポーンを取りに行く方がプランとしてはマシでしょう。しかし、大昔の自分もそういう手を指していたことを思い出しました。自分はチェスを始めてからあまり上達を感じられていなかったのですが、実は少しは進歩していることを認識できました。


ここで、37...Rxa5 38.b8=Q。黒はリザインしなかったのでチェックメイトになるまでゲームを続けました。
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最近は外国からの参加者も増えており、運営側も日本語と英語で案内するようにしているようです。開会式や閉会式の挨拶も二か国語分準備されていました。決して楽なことではないはずです。そんな運営のスタッフの皆様方にはスムースに大会を運営をしていただき感謝しております。




2021年11月23日

Japan Open 4日目: スタッフの皆さま、ありがとうございました。



7ラウンド目。黒。Kさん。English。


また、minority attack が来ました。

私はキャスリングをしましたが、コンピュータは ...a5 が最善だったと言ってます。そして、この後も何度も何度も ...a5 が最善だったと言われたのでその回数を数えてみたらなんと11回もありました。それだけ、このポーンストラクチャーに対する対処法が分かってないってことですね。


白の直前の手は 24.Rac1。h6のナイトがウザいのでちょうど ...Bg5 で追い払いたいと考えていた時にその白の手は私にとってラッキーでした。で、24...f5!。

コンピュータにもお褒めいただきました。白がほぼ何をしても、次は 25...Bg5 で、Exchange up は確実。でも、そのわりには評価値(-0.3)が低いですね。


ここは 29...Qxd4 か 29...Qxf5 か悩みどころ。勝ちにいくならポーンを取れる 29...Qxd4 でしょう。しかし、相手にクイーンが残るということは逆転の機会を白に与えることになります。相手は unrated ですが、今大会の成績を見るからに(私が勝てない相手2人に勝っている)棋力は相手の方が高いと判断していました。なので、クイーン交換をしてドロー以上を確定させました。チキンです、はい。

最後は白の時間が切れて私の勝ち。
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2勝2敗3ドローで、最終的には3.5ポイント。私のスタート順位は70人中45番目で下半分に入っているのでポイントを半分取れて満足です。

しかし、繰り返しになりますが、1手に数分使えるのは幸せです。また、どのゲームも3時間とか4時間とかぶっ続けでしたが意外と集中力は切れませんでした。ブリッツでありがちな駒がタダでポロっと落ちるみたいなのは皆無でした。
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この大会は素晴らしかったです。閉会式で主催者が自らを褒めていましたが、全然OKだと思います。

この大会にはスタッフが大勢いました。10人以上。国内の大会では過去最高の人数だったかもしれません。部屋が複数ある場合、下位ボードの部屋はおざなりになりがちですが、この大会では下位ボードの部屋でも常にスタッフがいました。また、通訳のスタッフがいましたが、それも初めてかもしれません。運営の質はスタッフの人数にある程度比例するでしょう。毎回これだけの人数を確保するのは難しいかもしれませんが、今後もこうだとありがたいです。

スタッフの皆さま、ありがとうございました。

ちなみに、初めて見る外国系のプレーヤーが何人かいましたが(私の対局の相手の2人を含む)皆さん日本語が流暢で驚きました。通訳いなくても大丈夫だったかもしれません。

2021年11月22日

Japan Open 3日目



5ラウンド目。黒。Kさん。Scandinavian。


前回当たったのは2018年。どうせ同じにはならないだろうと思いつつも当時のゲームを並べておきました。ところが、意外にもここまでは前回とまったく同じ。前回はここで間違えましたが、昨晩 復習しておいたおかげで同じミスは避けられました。プレパして役に立つのは珍しい気がします。


キャスリングが難しいことに気付きます。例えば、7...Nf6 8.O-O Bd6 なら、9.Re1+ が痛いです。なので、7...Bd6 を先にして、8.O-O なら 8...Ne7 で我慢するつもりでした。ところが、白が指したのは 8.Nc3。これで普通にキャスリングできそう。8...Nf6。

おっと危ない。ここもうっかりキャスリングしようものなら 11.Nxc6 を喰らいます。こういうことに気付けるのも時間がたっぷりあるから。とうわけで、10...Be5 を挟んでおきました。


派手な手が来ますねぇ。これもOTBならでは。飛んできたビショップはすぐには取れませんが、15...Bg4 16.f3 Bxf3 17.gxf3 Rxf7 と、バックランクを守りながらマテリアルを取り返せます。


ここは 21.Rd8+ Rxd8 22.Nxd8 で 23.Re8# が threat になる流れを読んでいたのですが、白が実際に指したのは 21.Nd8。たしかに mate threat はありますが、21...h6 で白はマテリアルを損することが避けられません。勝ち。
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6ラウンド目。白。Fさん。Queen's Indian Defense。


このあたりは白なのに苦しいと感じてました。ピースを動かす余地があまりない、的な。でも、コンピュータの評価値は意外にも 0.0 なんですね。ほんと、自分の局面評価はあてにならない ...


ナイトを良いマスに置けて安心したところで、黒のキングサイドアタックの始まります。


33...Qxe3 をされないように e3 を守ったのですが、ここで 33...d4 を突かれたら死ぬと思ってました。白からは 34.exd4 出来ないですから。でも、別に黒から 34...dxe3 が出来るわけではなさそうなので、実際はどうってことなさそう。


前の局面から20手を経てようやく黒がクイーンサイドのポーンを突いてきました。しかし、54.Qc4+ を見落としたと想像します。30手くらい延々と防戦一方でしたが、このチェックのおかげでようやく息を吹き返しました。


ポーンを得してますが、2段目を守っていなけれならない(特に ...Re2 を警戒)のでドローオファーしたら受諾していただけました。しかし、gポーンはパスポーンなので自分の方が若干有利(少なくとも黒からルークを交換できない)と思っていたのですが、評価値は -4.7。どうしてそうなるのか分かりませんがラッキーだったようです。

2021年11月21日

Japan Open 2日目: もしかして minority attack ってやつですか?!

3ラウンド目。黒。Hさん。Catalan。


序盤からポーンを損します。7...Qc8 でb7は守れますがd5のポーンは落ちます。ブリッツですらなかなかセンターポーンを落とすことにないのに、こうも簡単に取られるとは。


白にe4のポーンを突かれないようにしています。こういうことをしなければならないのは Catalan のようにオープニングの種類が限定されますが、ブリッツだとこういう機会はなかなかないです。毎日ブリッツやってるのに Catalan は今年はまだ一度しかありません。そういう意味でもOTBはいつもと違ったことが出来ていいですね。

白がクイーンサイドのポーンを突いてきてるのはもしかして minority attack ってやつですか?!ブリッツだとこういうのに遭遇することはほとんどないので模範的な対処法とかは知りませんが、こうやって実戦で考えるのが一番勉強になると思ってます。白から突いてくるとしたらbポーンだと思うので、それを躊躇させるための 20...Rc8。

ちょっとだけタクティクスっぽいことを。私のナイトは逃げ場所がないので 32.h3 と突いてきた場合 32...Bxd3 33.Qxd3 Nxe5 が出来るようにました。相手はそれに気付いたのか 32.Nf4。面白くなかったです。

最後は劣勢の局面のまま時間切れ負け。

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4ラウンド目。白。O君。Colleもどき。


この 17.b4 を突いた時は自分の方が優勢だろうと感じてましたが、実際は違ったようです。しかし、たとえ勘違いであっても「自分の方が優勢」と感じながら指せる方が精神的には良いはず。

ここで黒からドローオファー。黒は自身が有利だと思っていないのは明らかです。しかし、私も、このままhポーンを突き進められるのは嫌なんです。Be2-f1-g2 として斜めの利きは遮断するつもりですが耐え切る自信がありません。で、ドローに合意。

2021年11月20日

Japan Open 1日目


日本でもトップボードの盤面をリアルタイムで配信することはありますが、今回は盤面だけでなくカメラまであるので映像付きです。しかも、カメラ3台。主催者の気合を感じます。

私が最後にOTBの試合をしたのは2019年12月15日なので約2年ぶりです。しかし、参加者の大半は昔と変わっておらず「あの人誰だっけ?」というのもなく、ブランクが2年もあったとはとても思えません。

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1ラウンド目。黒。Sさん。QGD。

レーティング差が400以上あるのでドローでさえアップセット扱いになります。要は、勝てる見込みはまったくありません。しかし、タイムコントロールは90分+30秒/1手。この長いタイムコントロールはOTBならでは。1手に5分使って考えられるのは幸せ!


試合中、指して後悔したのはこの1手(25...Qf6)のみ。あまり考えてなかったからです。クイーンを交換したかったのですが、交換してくれなさそうなのは自分でも分かったはずです。ならば、ハッタリでもいいから 25...Qg5 でc5のポーンにプレッシャーをかけた方がマシだったな、と。この後 白に 26.Qb7 とされ、すごく嫌な感じになりました。


やはり 7th rank に入られたのが痛いです。33...f5 なら 34.Be5 でしょう。ここで負けたと感じました。この5手後にリザイン。
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2ラウンド目。白。Dさん。Barry Attack。

長く指してないオープニングだったので細かいことはまった覚えていません。しかし、相手のキングサイドをこじ開けてメジャーピースで攻撃する楽しさは味わえました。

この20.Qh2 が決断の1手。この後、20...Qxc3+ 21.Ke2 Rxc2+ 22.Bxc2 Qxc2+ と続くのは予期していましたが、黒からチェックが止まったら Qxh7# で終わるというのが私の筋書でした。しかし、23.Kf3 Qxf5+。あれ?止まると思ってたチェックが止まらない ...で、合意のドローとなりました。

20.Qh2 の代わりに 20.Qg2+ Kh8 21.Kd2 が白にとって理想的だったようですが、残念ながらそれは思い付きませんでした。

2020年2月24日

メルボルンにて

1週間ちょっと仕事でメルボルンに行ってました。書いてることは Twitter のツイート+α程度です。

フライト
何年か前、機内設備でチェスが出来ましたが大して強くありませんでした。現状はどんなものなのか調べてみると、なんと、ナイトのアイコンを使っているくせに選択肢にチェスが無い ...


職場
現地の私の同僚はレーティング1900~2000。オフィスに盤駒を常備していますが、オフィス内に相手になる人がいません。時間があれば彼と対局するつもりでしたが今回はとてもそんな余裕はありませんでした。



Melbourne Chess Club
ここを訪れるのは実は2回目。前回が相当昔だったようで(2008年以前)現在のブログにその記事がありません。Melbourne Chess Clubはメルボルン市内から歩くと時間がかかることは覚えていたし、仕事が終わった後に寄るしかないので、行くならトラム(路面電車)と決めていました。そう決めてはいたものの下調べをしている暇もなかったので切符(ICカード)を買うことから乗るべきトラムを探すことまですべて行き当たりばったり。


着いた時は平日の20時過ぎで、ブリッツの大会中。主催者もプレーしていたため、ラウンドの合間に本の置いてある部屋の鍵を開けてもらうのがやっとでした。


「古い本しかないよ」と言われましたが、本当でした。前回来た時よりも古いんじゃないかと思うくらい。しかし、ここまで来て手ぶらでは帰りたくないので古くてもあまり関係ない本を買いました: First Theories of Hexagonal Chess。AUD 2.00。日本円で150円くらい。この本を読むことは多分ないと思いますが記念品なので問題ありません。


ブリッツが終わると参加者はささっと帰りました。平日の夜にカジュアルにブリッツの大会が出来る環境は羨ましいですね。

図書館
昨年末にメルボルンの大学を訪れたチェスプレーヤーが大学の図書館にチェスの本がたくさんあるとツイートしていたのを覚えていたので、メルボルン市立図書館に行ってみました。が、置いてあったのはたったの3冊で、Minecraft より少ない ...